ブレーキングマイスターへの道・ブレーキングテクニックのすべてがわかる

【STEP2】「止まるブレーキ」&「曲がるブレーキ」

 止まるブレーキング

「止まるための」ブレーキング

「止まるための」ブレーキングで、一番重要なことは、「いかに速く減速しスピードを落とすか」です。
まず、下のロガーを見てください。

富士1コーナーの踏力グラフ(踏力+スピード)

このロガーは、時間軸解説にも使用した、富士スピードウェイの1コーナーでの踏力グラフにスピードデータを加えたものです。

大きく分けて、「止まる」ためのブレーキは三部構成となります。
まず、踏み始めの部分から、解説しましょう。

じつは、いかに速く減速できるかどうかは、この部分のレベルで決まってきます。
「フロントブレーキは、なぜ大きい?」のコーナーで解説したように、ブレーキロータの大きさや、ブレーキキャリパの容量は、必ずフロントの方が、リアより大きくなっています。これは、荷重移動が行われた状態で、フロント / リアのブレーキがバランスするように、ブレーキの大きさ(容量)が決められているからです。

ということは、初期のブレーキで大切なことは、ブレーキの配分が適正化する前荷重の状態をいかに速く作れるかどうかが重要なのです。

では、下のグラフを見てください。

3種類の踏力グラフ

まず、A のドライバーのブレーキの踏み方から解説しましょう。
このドライバーは、ブレーキの踏みはじめから、徐々に踏力を上げて前荷重を作っていますが、最大踏力になるまでに、ちょっと時間がかかりすぎです。

対してC のドライバーは、ブレーキの踏みはじめに一気に踏力をかけています。
しかし、ブレーキを踏んだ瞬間に、クルマは前荷重になるのではなく、そこには少し時間がかかります。ブレーキのバランスは、荷重移動を考えて容量が決められていますので、荷重移動する前では、タイヤのグリップは、フロントもリアも均等です。
この状態で、急激に踏力を上げると、フロントタイヤが簡単にロックしてしまい、そのロックを解除するために、C のドライバーは、一度上げた踏力を緩めています。

そしてB のドライバーは、フロントタイヤがロックする寸前の踏力でブレーキングしていることから、前荷重になるスピードが速く、その分、早いタイミングから強いブレーキがかけられています。そうすると、クルマはどんどん前荷重になり、その結果、もっと強くブレーキが踏めるようになります。この相乗効果から、制動距離が短い、理想的なブレーキングとなるのです。

これらを面積で考えると、下の図となります。

3種類の踏力グラフ(色付き)

グラフの中での面積は ブレーキの効き = 減速量 を表わすことになり、面積が大きければ、大きいほど、スピードが速く落ちるということになります。
短距離で、スピードが落ちるかどうかは、特に、この前半部分が大きなウエイトを占めています。そして、そのためには、フロントブレーキがロックする寸前の踏力により、早く前荷重にすることが何よりも重要だということです。

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