ブレーキングマイスターへの道・ブレーキングテクニックのすべてがわかる

【STEP5】ABS使いこなし術

ABSのデメリット

「止まる」ためのブレーキには有効なABSも、「曲がる」ためのブレーキングにとっては、メリットになる部分と、デメリットになる部分があります。

まず、メリットになることは、ブレーキのリリース量に対して、ステアリングの切り込み量が多い場合です。この状態では、減らしたタテグリップ以上に、ヨコグリップを要求していることから、グリップ限界を超えてしまいます。こんな時、ABSが作動して、アンダーステアの量を最小限に抑制してくれることは、メリットと言えると思います。

しかし、いくらABSにより、アンダーステアの量を最小限に抑制してくれたとしても、少ないなりにもアンダーステアは発生して、ラインは必ず外側にずれていきます。
そうです、タテとヨコの関係を完全に理解して、アンダーステアが出ないように、制御できるABSは存在しないのです。

そして、コーナリングに関してABSがデメリットになることは、ABSを効かせながら「止まる」ブレーキをかけている場合に発生します。

ABSの介入によるデメリット

グラフのように、「止まる」ブレーキにおいてABSが介入した状態から、「曲がる」ブレーキに切り替えるとき、強すぎる踏力をABSが効かないギリギリの踏力に調整しなければなりません。グラフで説明すると、ポイント①~ポイント②までの踏力コントロールが、それにあたります。

この部分では、踏力を弱めていっても、実際のブレーキの効きは変わりませんので、クルマからのレスポンスが無い状態で、ピッタリとグリップ限界の踏力に合わせ込むことは至難の業です。

ここで踏力を緩めすぎるとグリップが余り、車速は落ちません。また、踏力の緩めが十分でないと、リリース状態でも、ABSは効いたままとなり、アンダーステアとなってしまいます。この、リリース状態での難しい踏力コントロールを強いられることが、ABSの介入による最大のデメリットとなります。

要するに、ABSが装着されていても、「止まる」ブレーキから、「曲がる」ブレーキまでの一連のブレーキングの中で、ABSが作動するかしないかのギリギリのライン(タイヤのグリップに対して、限界の踏力)で、コントロールできることが、理想のブレーキングとなります。

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