ブレーキングマイスターへの道・ブレーキングテクニックのすべてがわかる

【STEP5】ABS使いこなし術

ABSのメリット

では、いきなりですが、質問です。

ブレーキにはかなり自信のあるエキスパートドライバーと、免許を取ったばっかりのビギナードライバーがブレーキングで勝負することにしました。

クルマは同じクルマを使用し、同じスピード、同じ地点からブレーキングを行うものとします。ただ、ハンディでエキスパートドライバーは、ABSなしで走り、ビギナードライバーは、ABSありで走ります。

さて、10回勝負をしたらどちらが勝つでしょう?

 

  1. 絶妙なブレーキコントロールで10回ともエキスパートドライバーが勝つ。
  2. しっかりABSを効かせられれば、10回ともビギナードライバーが勝つ。
  3. ブレーキコントロールが決まった時だけ、エキスパートドライバーが勝つ。

 

さて、答えは?

 

答えは、2.の10回ともビギナードライバーが勝つです。

 

なぜなら、エキスパートドライバーが行う絶妙なブレーキコントロールとは、4輪の中で一番グリップが低いタイヤに合わせて、ブレーキ踏力をコントロールするということですよね。ということは、コントロールしたときに、他の3本のタイヤは、十分グリップしているのに、ブレーキが緩むということになります。

対して、ABS付きのビギナードライバーは、一番グリップが低いタイヤがロックしたら、ロックしたタイヤだけ、ブレーキの圧力が下がる仕組みです。そう、他の3輪はブレーキが緩まないということになります。
要するに、ブレーキペダルが4つ付いていると考えれば、話は簡単です。

もちろん、ABS付きでもブレーキペダルは1つしか付いていませんが、機構としてブレーキペダルが4つ付いているようなもので、4輪の中で一番グリップが低いタイヤがロックした瞬間に、その車輪だけブレーキの圧力が下がり、残りの3輪は、今までどおりの圧力がかかっているのです。

この状況を、ABSなしで作るなら、ブレーキペダルが4つ付いて、ロックしたタイヤだけ、ペダル踏力でコントロールできれば、いい勝負かもしれませんが、現実的に不可能です。

だから、しっかりABSを効かせることができれば、10回ともビギナードライバーが勝つ  ということになります。

要するに、高性能なABS装着車であれば、スイッチのように強烈な力でブレーキを踏んでも、必要以上の圧力は“カット”されるわけですから、フロントタイヤの最大グリップいっぱいにブレーキが使えることになります。
結果、前荷重になるスピードも速く、制動距離が短くなります。

ABSは、このように、止まるためのブレーキにおいて、非常に有効な手段です。
特に、ウエット路面での、安心感は絶大です。

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